3 単式蒸留機の機能

 

(9)  単式蒸留器の精留効果測定結果(文献3-5)

 

   図3-9 に掲げた循環蒸留器(A)を用いて、単式蒸留器の精留効果を測定しました(文献3-5)。容量2.5Lの蒸留缶にエタノール水溶液500mlを張り込み、塔頂から流出する蒸気を冷却器により凝縮させ、凝縮液は全量を缶液中に注入して、2時間以上循環させると缶液及び留出組成は一定となりました。分析値を用いて式③-⑥により、エタノールに関する理論段数(N)を求めました。
    その結果、単式蒸留の理論段数は室温、缶液濃度、留出速度及び濃縮塔の長さにより影響されることを確認しました。したがって、形状の異なる蒸留器について、室温、缶液量、缶液組成及び留出速度を一定に保って理論段数を測定すると、蒸留器の形状の及ぼす影響を測定できることが分かりました。

 

図3-11 循環蒸留器(B)
                                                              

   (1)濃縮塔の長さと留出速度の理論段数に及ぼす影響
   濃縮塔の長さが18.5cm( 図3-9  、標準タイプ)、39.5cm及び78.5cm(図3-11)の場合の留出速度と理論段数の関係について測定した結果を図3-12に掲げました。
留出速度は蒸留缶断面積基準の値です。留出速度が一定の場合について比較すると、濃縮塔の長さが長いほどNeは大きくなりました。
   濃縮塔の長さが標準的な蒸留器の約4倍である78.5cmで、留出速度が小さい場合、Neは2.7に達しました。
   単式蒸留器の理論段数は、運転条件によっては2.0以上になることを確認しました。

図3-12    単式蒸留器の理論段数に及ぼす濃縮塔長の影響            縦軸は缶液が3.0 %v/vエタノールの場合の理論段数
 

(2)分縮率の理論段数及び留出液酸度に及ぼす影響
  単式蒸留器の上部(濃縮塔)をリービッヒ型冷却器とし、冷却水の高さを調節し、酢酸500ppmを含有する0.3 mol%(1.0 vol%)エタノール水溶液を原料として蒸留を行いました。
   分縮率 Pは次式により測定しました。

   P=(F0-F)/F0                  (3-7)

    F0:分縮器に水を流さない時の留出液流量(ml/min)。
       F  :分縮器に水を流した時の留出液流量(ml/min)

 

図3-13リービッヒ型分縮器付き蒸留器

 

図3-14 単式蒸留器の理論段数及び留出液酸度に及ぼす分縮率の影響      縦軸は缶液が1.0 %v/vエタノールの場合の理論段数。

 単式蒸留器の濃縮塔における分縮率と理論段数及び留出液の酸度の関係を図3-14に掲げました。図3-14は分縮率が高いほど理論段数が大きいことを示しています。
   また、エタノールに関する理論段数が大きいほど留出液の酸度は低下しました。
   したがって、単式蒸留器の塔の部分を分縮器型とし、分縮量を制御することにより理論段数が制御できると推察されました。

[本節のまとめ]
   実験の結果、単式蒸留器について次のようなことが分かりました。
①同一の単式蒸留器では留出速度が小さいほど理論段数は大きい。
②同一の単式蒸留器で留出速度が一定の場合は分縮液量が多いほど理論段数は大きい。
③留出液の酸度は理論段数が大きいほど低くなる。

 

 

 

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