(4) 水-エタノール蒸気の分縮による濃度変化
単式蒸留器によるエタノール水溶液の蒸留においては、上方ほど温度は低くなっています。 図3-6は 図2-6 と同様に、エタノール水溶液についての沸点曲線と露点曲線です。図3-6において、10%v/vエタノール水溶液は、1気圧においては86.4℃で沸騰します。蒸留缶液上の空間では温度は連続して低下していますが、前記蒸気の温度が85.0℃に低下した時の蒸気の濃度変化を考えます。
10%v/vエタノール水溶液が沸点である86.4℃において平衡な蒸気のエタノール濃度は73.7%v/vです。蒸気の温度が85.0℃に低下すると、蒸気のエタノール濃度は77.2%v/vに上昇します。
したがって、蒸留缶液と濃縮塔頂の温度差が大きいほど、留出液のエタノール濃度は高いと言えます。
単式蒸留器の内部では必ず分縮が起きますから、図3-5 において、留出液のエタノール濃度が缶液に平衡な濃度より高くなったのは、蒸留器内の蒸気の分縮による精留効果のためと推察されます。

分縮によるエタノール濃度の変化
(文献3-4のデータより作成)