8 循環型蒸留機(試案)

(2) 循環型蒸留機の構造


  再蒸留部に一定量の凝縮液を貯留し、余剰液を仕込部に流下させながら蒸留すると、循環蒸留を行うことができますが、再蒸留部に一定量の凝縮液を貯留する方法として、溢流管を利用する方法及び液面センサーと自動バルブを利用する方法があります。

① 溢流管を利用する循環型蒸留機
溢流管を利用する循環型蒸留機を図8-2に示します。棚段付き蒸留機( 図5-2 )を用いて、図 8-2のように棚段の有する複数の部品装着孔の内の一部に、再蒸留部貯留液(10)の量を一定とするための溢流管(12)を装着し、他の部品装着孔にはバブルキャップ(13)を上端に載置した蒸気導管(11)及び必要があれば密閉用蓋を装着して循環型蒸留機とします。
  仕込液(9)の加熱時に仕込部(1)の蒸気が溢流管内へ流入するのを防ぐため、棚段(4)から溢流管下端までの長さは、蒸留終了後も溢流管の下端が仕込液中に没する長さとします。
  棚段の有する部品装着孔に装着した蒸気導管の合計断面積が小さい場合、仕込部で発生する蒸気の流出が妨げられ、仕込部内の圧力が上昇して仕込液の温度が上昇する可能性があるので、蒸気導管の合計断面積は仕込部の断面積の10%程度以上とします。

 

(図8-2)

図8-2 循環型蒸留機(試案)  
記号
1:仕込部、2:再蒸留部、3:保温材、7:直接加熱装置、9:仕込液、10:再蒸留部貯留液、 11:蒸気導管、12:溢流管、13:バブルキャップ、14:逆流防止蓋、16:分縮機、 17:冷却機、22:留出液、43:安全弁

 

② 自動バルブを利用する循環型蒸留機

再蒸留部の温度及び貯留液組成の均一化のために再蒸留部(上段)の低にはバルブを複数装着した方が良いと考えられます。蒸留機の運転時に複数のバルブを同時に操作するのは困難なので、自動バルブの方が良いと考えられます。自動バルブを設けると、簡便に循環型蒸留機を行うことができます。
(1)再蒸留部底への自動バルブ装着による循環蒸留
棚段の部品装着孔に逆流防止蓋付き蒸気導管またはバブルキャップを装着すると、蒸留機上部で生じる凝縮液を仕込部に流下させない再蒸留型となりますが、図8-3のように、自動バルブにより再蒸留部貯留液を仕込部に流下させ、液面センサーを利用して、貯留液量を一定の範囲内に保つように制御すると、循環蒸留を行う事ができます。
他形式の蒸留機からの変更は、前記の溢流管を用いる場合より簡便です。
(2)自動バルブ
液面センサーにより液面の高さを検出し、貯留液量をバルブのON-OFFにより制御すればよいので、バルブは液体の流れに抵抗の少ない開閉型が良く、例えばT社の電動フランジ形ボールバルブ(流体温度範囲0~120℃、環境温度範囲10~50℃)などがあります。
(3)液面センサー
再蒸留部内液面の上限と下限を検出するために、2本のセンサーを装着する必要があります。センサーとしては、例えばY社のサニタリータイプ静電容量式レベルスイッチがあり、センサーの許容温度-10~+150℃、許容圧力0.5MPaであり、液体はアルコールにも利用可能です。

 

図8-3 自動バルブを利用する循環蒸留機(試案)

 

 

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