1 二日酔い予防方法諸説と問題点

(3)  二日酔い予防方法諸説の検討

①  酸性の強い食品は二日酔いしやすいか?
 前節で述べた二日酔い予防方法の内、酒を飲む時に良質なタンパク質を含む料理を食べた方がよいとされていますが(前項まとめA)、その効果は生化学的にも明らかにされています(文献1-9)。
 酸性の強い食品については、酒を飲む時には控えた方がよいとされ、その中には卵類や赤身の魚が含まれています(前項まとめE)。しかし、それらの食品は上に述べた良質のタンパク質を含む食品にも含まれており、相反した記述になっています。
 食品の酸性、アルカリ性の程度は、食品を空気中で燃焼させ、残留した灰に水を加えて水溶性物質を抽出し、pHが測定されます。食品の灰は食品に含まれる金属(ミネラル)の酸化物です。食品を灰化して酸性やアルカリ性の程度を測定する方法は、分析機器が進歩していない時代に考案された食品の分析方法であり、食品に含まれる金属を全部酸化物として一括して評価する方法です。しかし、最近では分析技術が進歩し、食品に含まれるミネラルは個別に直接測定されるようになりました。最近の栄養学ではミネラルの重要性については物質ごとに検討されています(文献1-9)。現在、通常の摂取量において二日酔いを助長するようなミネラルは報告されていません。
 食品の酸性、アルカリ性論は過去にもてはやされた時期がありましたが、最近ではそれほど重要視されていないように見受けられます。食品の灰は食品に含まれる金属の酸化物であり、食品の成分として重要視されるミネラルと無関係ではないことから色々議論はあるようですが、少なくとも二日酔いとの関係について明確な報告はありません。したがって、現時点では、前回の悪酔い、二日酔い予防方法からは酸性食品、アルカリ性食品に準拠する予防方法は削除してよいと考えられます。

②  単糖類によるアルコール分解の促進について
 前節の二日酔い対方法の内、まとめのGとHは、単糖類の摂取についての評価です。
 Gは「単糖類はアルコールとアセトアルデヒドの酸化を促進する(文献1-8、1-10)」という内容であり、Hは「単糖類は、アルコールの酸化は促進し、アセトアルデヒドの酸化は促進しない(文献1-11)」という内容になっています。両者は、二日酔いに対する影響については、全く相反する評価になっていますが、単糖類はアルコールからアセトアルデヒドへの酸化は促進するという点については共通しています。
 単糖類によりアルコールの分解は促進されるのでしょうか?
 アルコールとグルコースの代謝の関係については、20世紀前半によく調べられていて海外を含め多くの報告があり、アルコールの酸化に及ぼすグルコースの影響は否定的な結論が多かった(文献1-12)ことから一応の決着はついています。
 酸化酵素によるアルコール及びアセトアルデヒドのそれぞれの酸化反応について、反応速度論的に単糖類が反応速度を促進するという報告はありませし、反応速度を促進するという理論的根拠も明らかではありません。
 しかし、松本は、糖代謝の変調を来すような条件として、大量のグルコース(体重60kgの人間に対し600gに相当する量)を与えたウサギにアルコールを与え、「大量のグルコース投与によって、アルコール酸化は若干促進されるらしい」と報告(文献1-12)しています。アルコールの酸化に及ぼす単糖類の影響については、ウサギに異常に多量なグルコースを与えた場合の、松本の報告が一人歩きしているのではないかと推察されます。
 したがって、単糖類の通常の摂取量による二日酔いに対する影響については、前記⑦と⑧は誤りであり、削除してよいと考えられます。

③  文献記載の二日酔い予防方法総括
 以上の二点を修正し、改めて文献に記載してある悪酔い、二日酔い予防方法を整理すると次のようになります。
A  良質のタンパク質を酒と一緒に摂取する(文献1-6、1-10)。
 チーズ、卵、エビ、カニ、魚肉、牛肉、豆類など。
B  飲みはじめてから糖分を補給することが望ましい(文献1-6、1-9、1-10)。
 柿、蜂蜜、ケーキ、和菓子などを一緒に摂取する。
C  二日酔い防止に有効な成分を摂取する(文献1-6、1-10)。
 有効な成分:ビタミンB2、ビタミンB複合体(葉酸、ビオチン、B6、B1、ナイアシン、パントテン酸など)、ビタミンC。
D  胃、肝臓及び腎臓に負担のかかる食品を避ける(文献1-6)。
 脂肪分、強い刺激性の香辛料、大量のでんぷん、ピーナツ、漬物類、おちゃづけ、生野菜、繊維質の果物など。

 以上の4項目の方法の中には矛盾する方法があります。以下検討したいと思います。

 

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