第3章 単式蒸留機の機能

 

3-11分縮器付単式蒸留器による留出成分の制御(文献3-6)

    単式蒸留器に醪を張り込んで醪の温度を上昇させると、醪に含まれる成分は蒸気圧に応じて留出し、加熱によりフルフラールが生成して、蒸留の中間以後に留出します。
 留出液の酸度は蒸留初期は低く、蒸留の経過と共に徐々に高くなります。蒸留末期において、アルコール回収率を高くするため留出液のアルコール濃度が低くなるまで採取すると、酸度やフルフラール濃度が高くなり、得られる蒸留酒の品質は低下するという相反するところがあります。
 単式蒸留器による醪の蒸留において、留出する成分量を制御する方法について検討しました。

 

 図3-19   分縮器付き蒸留器

  前節の実験から、対照より理論段数の大きい蒸留器を用いて、蒸留の前半は対照より速く短時間で蒸留し、後半は対照と同程度の速度で蒸留すれば、蒸留時間は短縮されてフルフラールは減少し、酸度は対照と同程度以下にすることができると考えられました。
  図3-19のように、単式蒸留器の上部に分縮器を設け、分縮器の水位と留出速度を変えて焼酎醪を蒸留しました。蒸留の経過を図3-20、21に掲げます。

 

図3-20 留出率とアルコール濃度                         図3-21  アルコール濃度の経時変化
 ; Run C、分縮器の冷却水は、前半、後半とも2段目まで通水。
    ▲; Run D、分縮器の冷却水は、前半なし、後半は3段目まで通水。

     Run Cは前半、後半とも下から2段目まで冷却水を流し、Run Dは前半は冷却水を流さず、後半3段目まで冷却水を流しました。Run Cの留出速度は前半大、後半は小でした。理論段数の相違がアルコール留出曲線の明確な差となって現れました。Run Dは前半と後半のNeの差が大きいため後半にピークが認められました。
 分取した留出液のアルコール濃度が約10%v/vまでの分を混合して混和留出液(原液)として分析し、比較しやすいようにアルコール濃度25%v/vに換算した値を表3-2に掲げました。表3-2には沸点の高い香気成分の一つであるβ-フェネチルアルコールの含有量も掲げました。

  酸度はRun  D > C、フルフラール濃度はRun C >D順に高くなりました。Run Dは前半蒸留器内での分縮液量が少なく、留出速度も大きいため全体として理論段数は小さいので、混合留出液の酸度はRun Cより高くなったと推察されます。
 しかし、蒸留時間がRun Cより短縮されたので、フルフラール濃度は低くなったと推察されました。
 沸点の高いβ-フェネチルアルコール(bp. 219~221℃)の含有量は、酸度と同様な傾向を示しましたが、他の香気成分も、理論段数が大きいほど減少すると推察されます。
 以上の結果は醪を蒸留する時、分縮量と留出速度を調節することにより留出液組成がある程度制御できることを示しています。

[本節のまとめ]

 ①分縮器を備えていない単式蒸留器においては、前半は留出速度を大きく、後半は小さくする(前急後緩蒸留)と、留出液のアルコール濃度は高く、酸度は低くなりました。β-フェネチルアルコール含有量も同様の傾向を示しました。
②フルフラールは理論段数の大きな蒸留器で時間をかけて蒸留すると、蒸留の後半著しく増加しました。留出液中の沸点の高い香気成分は、前急後緩蒸留によると減少しました。

 

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