第5章 棚段付き単式蒸留機

 

5-6  棚段付き単式蒸留機により製造可能な焼酎のタイプ

5-6-1  蒸留機の種類と焼酎の香味

 焼酎の製造においては、色色な単式蒸留機が用いられており、ステンレス製が最も多く使用されていますが、木樽製蒸留機もあります。ステンテレス製常圧単式蒸留機を中心において考えると、蒸留機の種類と焼酎の香味の関係は図5-8のようになります。
 使用されている数は多くはありませんが、木樽製蒸留機は芋焼酎や泡盛製造用に根強い人気があり、焼酎の香味はステンレス製常圧蒸留機より濃厚です。一方、減圧蒸留機は穀類を原料とした焼酎の製造に広く用いられており、焼酎の香味は軽快です。
 木材は伝熱性及び熱容量が小さいので、木樽製蒸留機は断熱材で作られた蒸留機とも言えます。木樽製蒸留機は、蒸留機内での分縮液量が少なく、金属製蒸留機に比べ高沸点成分濃度が高く、原料特性も豊かで、バニリン前駆物質など高沸点成分が高いと推察されます。もっとも、醪の酸度が高ければ、焼酎の酸度も高くなります。
 一方、減圧蒸留機の内部の圧力は0.1気圧以下、温度は清酒の火入れより温度より低い60℃以下に保たれているので、蒸留缶液中での化学反応が抑えられ、こげ臭原因物質であるフルフラール類は生成しません。また、高沸点物質の蒸発量も少なく、酸度も低くなるので、こげ臭や原料臭が低く、軽快な香味の方が良い、穀類を原料とした焼酎に適していると推察されます。

図5-8 蒸留機の種類と焼酎の香味

5-6-2 棚段付き単式蒸留機により製造可能な焼酎のタイプ

 棚段付き単式蒸留機は、内部に孔のある棚段がありますが、孔の面積は蒸留機の断面積の約20%あるので、蒸留器機の蒸気及び凝縮液の流れに対する影響は小さいと推察されます(注)。また、図5-2のように、仕込部及び再蒸留部は断熱材で常時保温しているので、蒸留機内における分縮への影響も小さいと推察されます。
(注)工業的に用いられている蒸留塔の開口率(蒸留塔断面積に対する蒸気流路面積の割合)は10%前後です(文献5-3)。
 棚段付き単式蒸留機を運転する場合に留出液組成に関係する運転操作要素(装置)は表5-1の通り、5つあります。
 表5-1(再掲)は、それぞれの運転操作により、調節する量が大(または高い、多い)から減少する方向に操作した時に、調整する量(高沸点成分濃度・酸度またはフルフラール類濃度)の変化を示しています。
 表5-1において、缶液加熱量(2)は、大→小という操作をすると、蒸気速度は小さくなり、加熱時間は長くなるという逆の関係にあります。
 棚段付き単式蒸留機は表5-1に掲げた制御可能な5つの要素(装置)を操作して次の3タイプの焼酎を蒸留することを目標にしています。
①通常のポットスチル型蒸留機と同程度の香味で、適度な味の濃さ、きれいさを備えた焼酎。
②通常のポットスチル型蒸留機より濃厚な香味の焼酎。
 棚段付き単式蒸留機の濃縮塔部を断熱材で保温することにより、高沸点成分濃度が高くなり味は濃厚になりますが、酸度も高くなり、雑味が多くなる場合があります。
③通常のポットスチル型蒸留機より高沸点成分濃度及び酸度が低く軽快な焼酎。

 棚段付き単式蒸留機を十分活用するためには、あらかじめ製造する焼酎の品質を明確に定めておく必要があります。

[表5-1]

 

 

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