2-2 二日酔いの起こる機構
二日酔いは複雑で、小片(文献2-8)が述べているようにエタノールとアセトアルデヒドによる複合的な障害であると推察されています。
人体に摂取されたエタノールはエタノールからアセトアルデヒドを経て、酢酸まで逐次的に変化します。
第1段階:エタノールの脱水素によるアセトアルデヒドの生成
②第2 段階:アセトアルデヒドの酸化による酢酸の生成
2-2-1 エタノールからアセトアルデヒドへの変化
エタノールからアセトアルデヒドへ変化する経路は三つ報告されています。
①アルコール脱水素酵素による変化(文献2-1,4,9)
図2-1のように、エタノールはアルコール脱水素酵素とNADの作用により、アセトアルデヒドに変化します(反応1)。文献2-9には、体内で処理されるエタノールの約80%はこの系により処理されると記載されています。この反応は可逆反応であり、エタノールからアセトアルデヒドが生成する反応速度(r1)より、アセトアルデヒドからエタノールに戻る逆方向の反応速度(r2)の方が大きく、通常はアセトアルデヒド濃度は低く保たれます(文献2-4)(注:アセトアルデヒドの方が濃度が低い状態で平衡が保たれます)。

r1:エタノールからアセトアルデヒドが生成する反応(反応1)の速度
r2:アセトアルデヒドからエタノールが生成する反応(反応2)の速度
r3:アセトアルデヒドから酢酸が生成する反応(反応3)の速度
②ミクロソームエタノール酸化系(MEOS)によるエタノールの変化(文献2-4,9,10)
エタノールは肝臓の小胞体(ミクロソーム)でも分解されます。文献2-9には、「処理されるエタノールの約20%は肝臓でミクロソームエタノール酸化系(MEOS)により処理され、アセトアルデヒドに変化する」と記載されており、「大酒家はMEOS活性が誘導されるのでエタノール処理能力がアップするが、1.5倍位が限度と言われている」とも記載されています。補酵素はNADではなくNADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)です。
③カタラーゼによる酸化(文献2-4,9,10 )
酸化酵素カタラーゼの作用により過酸化水素が生成し、過酸化水素によりエタノールが酸化され、アセトアルデヒドとなる系もあります。文献2-4 には「この系は人によって違いが大きく、この系が発達した人では、摂取したエタノールの半量近くがこの系で酸化されることが知られている」と記載されています。