第2部第3章 糖質と二日酔いの関係

3-5 グルコースとエタノール消化におけるNADの消費
 人体内におけるエタノールまたはグルコースの消化経路は非常に複雑ですが、NAD消費量に着目して、文献3-4、3-5を参考にまとめると図 2-6のようになります。
 人間がエタノールを飲むと、エタノールはアルコール脱水素酵素及びアセトアルデヒド脱水素酵素の作用によって酢酸まで分解される時、エタノール1分子当たりNADは各1分子、計2分子消費されます(式2-1、2-2)。
 さらに、酢酸はアセチルCoAに変換され、クエン酸回路に入ります。クエン酸回路において、NADはさらに3分子消費され、酢酸は最終的にCO2とH2Oに分解されます。
 したがって、エタノール1分子当たりでは、NADは5分子消費されます。グルコース1分子からエタノールは2分子生成しますから、グルコース1分子当たりではエタノールから炭酸ガスまで分解されるのにNADは10分子消費されます。

 一方、人間がグルコースを食べると、解糖系で10種類の酵素反応により分解され、グルコース1分子から、ピルビン酸2分子が生成しますが、この時、NADはグルコース1分子当たり2分子消費されます。
 ピルビン酸はピルビン酸脱水素酵素複合体(ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体)の作用で脱炭酸され、アセチルCoAになります。この時、NADはピルビン酸1分子当たり1分子、グルコース1分子当たりでは2分子消費されます。
 アセチルCoAは、さらに8種類の酵素反応系からなるクエン酸回路において、CO2とH2Oに完全に分解されます。この時、NADはピルビン酸1分子当たり3分子、グルコース1分子当たりでは6分子消費されます。
 したがって、グルコース1分子当たりNADは合計10分子消費されます。

 つまり、一分子のグルコースを人間が直接食べた場合と、一分子のグルコースから発酵により得られたエタノールを人間が飲んだ場合のNAD消費量は等しいということになります。
 グルコース(分子量180.16)180.16gから、エタノール(分子量46.07)は理論上92.14g生成しますから、グルコース100g当たりエタノールは51.14g 生成することとなります。
NAD消費量から見るとグルコース100gはエタノール51.1g(64.4ml)に相当しますから、グルコース1.0 gはエタノール0.51g(0.64ml)に相当します。
 人間が食べたグルコースはクエン酸回路以外の経路でも消化されると報告されています(文献3-4、3-5、3-7)から、前記の量より少ないと考えられますが、飲酒時または飲酒直後に大量のグルコースを食べると負担が増すとは言えます。

図2-6 グルコースとアルコールの消化におけるNAD消費量

 

[参考]  糖質の消化について
 糖質の消化は非常に複雑なのでNADに着目して述べます。人が食べたデンプンはグルコース(ブドウ糖)に分解され、一部は体内にグリコーゲンとして貯えられ、一部はクエン酸回路を経てエネルギー源として消費されますが、貯えられたグリコーゲンも筋肉のエネルギー源となって乳酸に変化し、最終的にはクエン酸回路で水と炭酸ガスに分解されます。
①解糖(文献3-4、3-5 )
 グルコースは10種類の酵素反応からなる解糖系によりエネルギー源となる物質に変換されますが、消費された結果としてピルビン酸が生成します。
 解糖系でグルコース1分子につきNADは2分子消費され、2分子のNADHが生成します。
 解糖系の産物であるピルビン酸の代謝は非常に複雑で、細胞の違いや、酸素の供給状況によって乳酸になったり、クエン酸回路、アミノ酸やグルコース合成経路に入ったりします(文献3-4、3-5 )。ピルビン酸は、好気状態ではクエン酸回路に入り消化されますが、嫌気状態では乳酸になり、同時にNADHはNADに再生され、この反応は共役反応と呼ばれています。最終産物である乳酸は他の物質に変化できず、ピルビン酸に再酸化されるか、グルコースまたはグリコーゲンに合成されます。したがって、乳酸は最終的にはクエン酸回路で消化されることとなります。
②クエン酸回路(トリカルボン酸回路、TCA回路、文献3-4、3-5)
 解糖最終産物であるピルビン酸は、クエン酸となる過程でNAD 1分子消費し、さらにクエン酸回路に入り、水、炭酸ガス及び数種類の中間生成物を生産します。この回路を一周するとクエン酸1分子当たり、NAD 3分子が消費されます。
 結局、グルコース1分子からクエン酸は2分子生成し、クエン酸回路で水と炭酸ガスまで分解されると、グルコース1分子当たりNADは合計10分子消費されます。
 エタノールからアセトアルデヒドを経て生成した酢酸はアセチルCoAとなり、クエン酸回路で炭酸ガスと水に分解されるますが、回路を一周するとNAD 3分子が消費されます。グルコース1分子から酢酸は2分子生成するのでグルコース1分子当たりNADは合計10分子消費されます。

 

 

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