第2部第1章 二日酔い予防方法諸説と問題点

1-2 二日酔い予防方法諸説

 酒に関して、二日酔いに関することほど諸説が入り乱れている分野はないでしょう。二日酔い予防方法に関しては昔から様々な説があり、これらの中でどの説が正しいのか見当もつかない状態にあります。
 二日酔い対策に関する説が混乱している原因の一つに、従来の解説書では予防方法と二日酔いになった時の対処方法の区別が明確でない場合が多いように感じられます。医学的見地から書かれたものの多くは治療的な記述です。現在、悪酔いまたは二日酔い予防方法とされている代表的な説は以下の通りです。
 なお、「悪酔い」と「二日酔い」は分けて考えた方が良いと言われています(文献1-6)。通常、飲酒中または飲酒後早い時期に現れる頭痛や吐き気などの不快な症状は悪酔いであり、飲酒後、アルコールが抜けた後の頭痛、吐き気、倦怠感などの不快な症状が二日酔いと言われていますが、文献によっては明確に分けていない場合もあるようです。

1-2-1 赤羽:二日酔い防止の有効な対策はない。(文献1-7)
 悪酔いを起こすのはアセトアルデヒドの作用である。酒を飲んで血中にアセトアルデヒドを生じないようにできればいちばんよいが、これは不可能である。このアセトアルデヒドをいちはやく分解したり、除去したりする手段が発見されれば安心して酒を楽しめると思うが、いまのところそうしたよい方法がない。

1-2-2 田多井:アルコールの酸化をスムースにする方法。(文献1-8)
 果糖を主とする単糖類やビタミンB,Cの補強で、エチルアルコールの酸化をスムースにする方法が有効である。

1-2-3 小片:飲酒前に柿の実を摂取する方法。(文献1-9)
 小片の「柿の実のアルコール酩酊への効果」の研究は有名です。小片は、二日酔いは単にアセトアルデヒドのみによる中毒ではなく、アルコールとの複合的な中毒症状であるとし、富有柿果汁はアルコール酩酊の軽減作用をもち、悪酔い及び二日酔いに対して予防的効果があると述べています。

1-2-4 田多井:酒飲みの医学(文献1-6)
 非常に詳しく解説されており、本書以後に出版された解説書に多く引用されています。
①悪酔い、二日酔いを防ぐ対策。
(ⅰ)酒と一緒にたんぱく質を取ること。
 チーズ、卵、エビ、カニ、魚肉、牛肉、豆類など。
(ⅱ)酒を飲んだ後で甘い物を補給しておくこと、蜂蜜が最高。
(ⅲ)胃の調子を大切にすること。
 ピーナツ、漬物類、おちゃづけ、生野菜、繊維質の果物など胃の負担を倍加するものは禁物。
②酒に良い食物
ⅰ)肝臓の働きを助けること。たんぱく質とインスタント・エネルギーとなる糖分を欠かさない。
ⅱ)胃炎を防ぐこと。でんぷん質を大量にとらない。香辛料を控えめにする。
ⅲ)貧血を防ぐ。ビタミンCが不足しないようにする。
ⅳ)酒はブドウ酒を除いて酸性食だから、アルカリ性の青野菜、果物などを伴食する。
③酒に悪い食物
ⅰ)脂肪分は肝臓の負担を増す。
ⅱ)強い刺激性の香辛料は胃炎を起こし、また肝臓や腎臓のスタミナを衰えさせる。
ⅲ)酸性の強い食品は血液のバランスを乱し、悪酔いや二日酔いを助長する。ことに酸性のひどい米、白子、卵類、赤身の魚を避ける。
④酒に強くなる法
ⅰ)少しずつ酒にならす。
ⅱ)胃からのアルコール分の吸収を遅らせる。テンプラ、トンカツ、ハンバーグ、クリーム付きケーキ、チョコレートなどがよい。
ⅲ)飲み始めてから途中で糖分を補給する。蜂蜜、ケーキ類、和菓子。

1-2-5 小川、外山:悪酔いを防ぐ方法(文献1-10)
①良質のタンパク質を酒と一緒に摂取し、胃腸を保護する。カキなどの貝類、エビ、カニ、豆腐や納豆などの豆製品、脂肪の少ないササミ、鳥肉、バター、チーズなどがよい。また、血液をアルカリ性にする酢のものなどもよい。牛乳は胃の粘膜を保護し、血液が酸性になるのを防ぐ作用がある。
②ビタミンB2やビタミンB複合体(葉酸、ビオチン、B6、B1、ナイアシン、パントテン酸など)を摂取する。
③ビタミンCを多く含むミカンやリンゴなどの果物類を一緒に摂取する。
④ブドウ糖や果糖を多く含む柿や蜂蜜(特に蜂蜜がよい)などを一緒に摂取する。
 ビタミンB2やC、ブドウ糖や果糖などは、アルコールやその中間代謝物のアセトアルデヒドの酸化を促進して解毒する作用がある。

1-2-6 NHKためしてガッテン、クイズお酒の新常識(文献1-11)
  おにぎりなどデンプンを食べると、体内でデンプンが分解して単糖類が生成し、アセトアルデヒドが生成し、さらにアセトアルデヒドは無害な酢酸に変化するが、単糖類はアルコールからアセトアルデヒドへの変化を促進するので、アセトアルデヒドが蓄積し、悪酔いしやすい。

1-2-7 まとめ
 上記各引用文献の著者は執筆時大学教授で医学または農学系の著名な学者です。上記の説は多岐にわたっていますが、相反するようなことも見受けられます。二日酔い防止の観点から集約すると次のようになります。
①良質のタンパク質を酒と一緒に摂取する。(文献1-6、1-10)
 チーズ、卵、エビ、カニ、魚肉、牛肉、豆類など。
②飲みはじめてから糖分を補給することが望ましい。(文献1-6、1-9、1-10)
 柿、蜂蜜、ケーキ、和菓子など
③二日酔い防止に有効な成分を摂取する。(文献1-6、1-10)
 有効な成分:ビタミンB2、ビタミンB複合体(葉酸、ビオチン、B6、B1、ナイアシン、パントテン酸など)、ビタミンC。
④胃、肝臓及び腎臓に負担のかかる食品を避ける。(文献1-6)
 脂肪分、強い刺激性の香辛料、大量のでんぷん、ピーナツ、漬物類、おちゃづけ、生野菜、繊維質の果物など。
⑤酸性の強い食品は避ける。(文献1-6)
 米、白子、卵類、赤身の魚など。
⑥血液が酸性になるのを防ぐアルカリ性食品を摂る文献(1-6)。
 青野菜、果物、酢のもの、牛乳。
⑦単糖類やビタミンB、Cはアルコールやアセトアルデヒドの酸化をスムースにするので有効である。(文献1-8、1-10)
⑧デンプンが分解されて生じる単糖類は、アルコールからアセトアルデヒドへの酸化を促進するが、アセトアルデヒドの酸化速度は変わらない。その結果、アセトアルデヒドが蓄積するので、おにぎりは悪酔いしやすい。(文献1-11)

 上記の対策の内、⑤と⑥は、アルカリ性食品は体に良いという説に基づいています。
また、⑦と⑧中の、単糖類の影響については、単糖類がデンプン分解を促進するという説に基づいていますが、アセトアルデヒドの消化については全く逆の内容になっています。

 

 

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