第1章 単式蒸留機の構造

 1-3  「単式蒸留機」と化学工学における「単蒸留による蒸留機」の相違

  化学工学においては「単蒸留」という概念があり、文献1-3には、「単蒸留(simple distillation)とは蒸留缶と凝縮器だけを用い、蒸留缶から発生した低沸点成分に富む蒸気を分縮(蒸気の一部が凝縮すること、3-4参照)しないように凝縮器に導いて液化させる操作であって、留出する液の量と蒸留缶中の液組成との量的関係を示す式はレイリーの式としてよく知られている」と記載されています。
 現在、「単式蒸留機」という用語は酒税法以外でも広く使用されており技術的にはpot stillと英訳されています(たとえば文献1-4)。通常のポットスチル型蒸留機は蒸留機内で必ず分縮が起き、蒸留機壁で分縮した液は蒸留缶に逆流するので、蒸発量と蒸留機から流出する蒸気量は等しくありません。また、缶液組成と流出する蒸気組成は平衡ではないので、レイリーの式(注)は成立しません。したがって、ポットスチル型蒸留機は単蒸留機とは言えません。解説書の中には蒸留酒製造におけるポットスチルによる蒸留は「単蒸留」として解説してあるもの(文献1-5~8)もあり、単蒸留と単式蒸留という用語は混乱が見られます。
 「単蒸留」に適用されるレイリーの式は、1902年にイギリスの物理学者L. Rayleighにより導かれた式(文献3)ですが、「単缶式蒸留機」または「単式蒸留機」という用語は上述したように1817年頃には使用されていたと推察され、歴史的に見ても「単式蒸留機」と「単蒸留機」は別の装置です。

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奄美大島、名瀬の砂浜

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