第1章 単式蒸留機の構造

 

1-2  「単式蒸留機」という用語の歴史的な経緯

  
 蒸留の起源は明らかではないが、古くから行われていたという多くの記録があります。蒸留は薬剤師や錬金術師に利用されていましたが、1332年頃リキュール製造の秘訣として、蒸留技術がイタリアからパリに伝えられ、ヨーロッパ全体に広まったそうです(文献1-1)。 
 当時使用されていた蒸留機による一回の蒸留だけでは、留出液のアルコール濃度がきわめて低いので、その改良装置として再蒸留式の複式蒸留機ができました(文献1-2)。図 1-1は複数の再蒸留缶を有するグラゥベル型蒸留機です。1817年ピストリウス(Pistorius)によってピストリウス式分縮器が発明され、同分縮器を応用した複式蒸留機はピストリウス型蒸留機(図1-2)と呼ばれました。
   したがって、複数の蒸留缶を有する蒸留機の出現により、1個の蒸留缶を有する蒸留機は「単缶式蒸留機」または「単式蒸留機」、複数の蒸留缶を有する蒸留機は「複式蒸留機」と区別する必要が生じたと推察されます。
   余談になりますが、蒸留機は古代から存在していたのに、減圧蒸留機が使用されるようになったため、従来の蒸留機は常圧蒸留機と呼ぶ必要が生じたことと似ています。

図 1-1 グラウベル型酒精蒸溜機(文献1-2)


図 1-2 ピストリウス型酒精蒸溜機(文献1-2)
 

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